Espressif Systems

乐鑫信息科技(上海)股份有限公司
Espressif Systems (Shanghai) Co., Ltd.
種類 有限公司
市場情報 SSE: 688018
略称 Espressif
本社所在地 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
上海市浦東新区康安路御北路235弄3号楼1-7层[1]
設立 2008年4月28日 (2008-04-28)
業種 電気機器
事業内容 RISCマイクロプロセッサの開発、製造
代表者 テオ・スウィー・アン (取締役会長兼CEO)
売上高 増加 CN¥1.430億 (2023年)[2]
営業利益 増加 CN¥136.20億 (2023年)[2]
純資産 増加 CN¥2.20億 (2023年)[2]
総資産 増加 CN¥1.910億 (2023年)[2]
従業員数 625名 (2023年)
主要子会社 M5Stack
関係する人物 テオ・スウィー・アン
外部リンク www.espressif.com

Espressif Systems(エスプレッシフ・システムズ、中国語:乐鑫科技;拼音:Lèxīn Kējì)は、モノのインターネット(IoT)で使用される高性能かつ低消費電力のWi-FiおよびBluetooth通信チップを中心に、IoTプラットフォームをグローバルに展開する、上海市に本社を置く中華人民共和国の半導体企業[3][4]。

沿革

2008年4月28日にシンガポール国籍のテオ・スウィー・アン(中国語:張瑞安、英記:Teo Swee Ann)によって「つながる世界を、よりスマートに」を理念に中国で創業した[5]。同氏は、華中初級学院(現在のシンガポール華僑中学)を経て、シンガポール国立大学で電気工学の修士号を取得して卒業[4]。その後2000年から2008年まで、米国のTransilica、Marvell Semiconductor、そして中国のMontage Technologyで、BluetoothやWi-Fiチップの設計に8年間携わった[6]。

当初、一人で経営するコンサルティング会社として運営されていた。しかし発注量が少数であったためチップの製造をファウンドリーから受注を拒まれる。だが、テオのMontage Technologyでの業績を耳にしていたTSMCが、チップの製造を委託することになった[6]。同社への投資には米国のIntel Capitalや、中国の複合企業であるFosun Group(復星集団)が名を連ねている[4]。

2014年8月、サードパーティメーカーのAI-ThinkerによってESP8266を採用したESP-01モジュールが発売[7]。

2016年9月、ESP8266の後継としてESP32が発表。ベアチップで約2.80ドル、モジュールで約4.00ドルで発売した[8]。

2019年7月22日、上海証券取引所STAR市場で新規株式公開(IPO)を行った。同月30日には私募増資が私募増資の申請状況が登録申請済となり[9]、株式公開によって12億元を調達した[10][11]。

2022年3月、すべての製品をオープンアーキテクチャであるRISC-Vへ完全移行すると発表した[12]。

2023年9月時点で、10億個以上のIoTチップを出荷しており、Wi-Fiマイクロコントローラー事業において世界で5番目に大きな企業となった[13]。

2024年4月22日、ESP32を使用した開発ボードとモジュールの企業であるM5 Stackの株式の過半数を取得した[14][15]。

2025年、中国証券監督管理委員会(CSRC)から株式の私募増資の登録承認を受け、同年10月に手続きを完了した[16]。

2025年5月1日、RISC-Vを採用しWi-Fi 6とBluetooth 5に対応した「ESP32-C5」の量産を開始[17]。

2026年1月28日、同社初のWi-Fi 6Eに対応した「ESP32-E22」を発表した[18]。

経営

同社は設立以来、黒字経営と成長を続けており、2018年の収益は前年の2倍近くとなる6,900万米ドルであった[4]。2024年には売上高が20億700万元に達し、前年比40.04%増となった[19]。2024年4月22日、AIoTエコシステムを強化するために同社の半導体製品を採用しているM5Stackの株式の過半数を取得し子会社化[14][20]。

半導体業界では既存のアーキテクチャを採用するのが一般的であるが、自社でエンジニアリングを行うことで非常にコスト効率の良い設計手法を取る。Espressifの販売モデルは、主に直販で行われている[21]。

製品

Wi-FiおよびBluetoothを統合したデバイスやソリューションの提供において確固たる地位を築いた[22]。当初はWi-Fiマイクロコントローラーに注力したが、同社はその後、AIoT(人工知能モノのインターネット)やSoCの分野へと事業を拡大した[21]。

オープンソースを重視しており、ESP-IDF(IoT開発フレームワーク)やESP-Matterなどのソフトウェアを公開し、開発者コミュニティと連携を深め、開発者は柔軟かつ迅速な製品開発を行える環境が作られている[3]。

同社を代表する半導体製品としてESP8266とその後継であるESP32が挙げられ、著名な製品としてM5Stackに採用されている。コーヒーメーカーや電球などの製品に加え、スマートシティや自動化でのシステム構築を提供する企業でも採用され、電子工作で利用されている[22]。

製品一覧[23][24]

  • ESP8266ファミリー
    • ESP8266EX
    • ESP-WROOM-02D
    • ESP-WROOM-02U
    • ESP-WROOM-02
  • ESP32ファミリー
    • ESP32-P4
    • ESP32-E22 シリーズ[18]
      • ESP32-E22
      • ESP32-E22-M2-1
    • ESP32-S31
    • ESP32-S3 シリーズ
      • ESP32-S3
      • ES`P32-S3-PICO-1
    • ESP32-S2 シリーズ
      • ESP32-S2
      • ESP32-S2F
      • ESP32-S2-MINI2
      • ESP32-S2-MINI-2U
      • ESP32-S2-SOLO-2
      • ESP32-S2-SOLO-2U
      • ESP32-S2-MINI1
      • ESP32-S2-MINI1-2U
      • ESP32-S2-SOLO-
      • ESP32-S2-SOLO-U
      • ESP32-S2-WROVER
      • ESP32-S2-WROVER-I
      • ESP32-S2-WROOM
      • ESP32-S2-WROOM-I
    • ES`P32-S シリーズ
      • ESP32-S3-WROOM-1
      • ESP32-S3-WROOM-1U
      • ESP32-S3-WROOM-2
      • ESP32-S3-MINI-1
      • ESP32-S3-MINI-1U
    • ESP32-C6 シリーズ
      • ESP32-C6
      • ESP32-C6-MINI-1
      • ESP32-C6-MINI-1U
      • ESP32-C6-WROOM-1
      • ESP32-C6-WROOM-1U
    • ESP32-C61 シリーズ
      • ESP32-C61
      • ESP32-C61-WROOM-1
    • ESP32-C5 シリーズ
      • ESP32-C5
      • ESP32-C5-WROOM-1
      • ESP32-C5-WROOM-1U
      • ESP32-C5-MINI-1
      • ESP32-C5-MINI-1U
    • ESP32-C3 シリーズ
      • ESP32-C3
      • ESP8685
      • ESP32-C3-MINI-1
      • ESP32-C3-MINI-1U
      • ESP32-C3-WROOM-02
      • ESP32-C3-WROOM-02U
      • ESP8685-WROOM-01
      • ESP8685-WROOM-03
      • ESP8685-WROOM-04
      • ESP8685-WROOM-05
      • ESP8685-WROOM-06
      • ESP8685-WROOM-07
    • ESP32-C2 シリーズ
      • ESP8684
      • ESP8684-MINI-1
      • ESP8684-MINI-1U
      • ESP8684-WROOM-01C
      • ESP8684-WROOM-02C
      • ESP8684-WROOM-02UC
      • ESP8684-WROOM-04C
      • ESP8684-WROOM-05C
      • ESP8684-WROOM-06C
      • ESP8684-WROOM-07
    • ESP32-H4 シリーズ
      • ESP32-H4
      • ESP32-H4-WROOM-1
    • ESP32-H21 シリーズ
      • ESP32-H21
      • ESP32-H21-MINI-1
    • ESP32-H2 シリーズ
      • ESP32-H2
      • ESP32-H2-MINI-1
      • ESP32-H2-MINI-1U
      • ESP32-H2-WROOM-02C
    • ESP32 シリーズ
      • ESP32-D0WD-V3
      • ESP32-D0WDRH2-V3
      • ESP32-U4WDH
      • ESP32-PICO-V3
      • ESP32-PICO-V3-02
      • ESP32-PICO-D4
      • ESP32-D0WD
      • ESP32-D0WDQ6-V3
      • ESP32-D0WDQ6
      • ESP32-S0WD
      • ESP32-WROOM-32E
      • ESP32-WROOM-32UE
      • ESP32-WROVER-E
      • ESP32-WROVER-IE
      • ESP32-MINI-1
      • ESP32-MINI-1U
      • ESP32-PICO-02
      • ESP32-PICO-02U
      • ESP32-PICO-V3-ZERO
      • ESP32-WROOM-32D
      • ESP32-WROOM-32U
      • ESP32-SOLO-1
      • ESP32-WROVER-B
      • ESP32-WROVER-IB
      • ESP32­-WROOM­-DA
      • ESP32-DU1906
      • ESP32-DU1906-U

問題

隠し機能問題

2025年3月6日、セキュリティ企業のTarlogic Securityが、数百万台のIoT端末に搭載されているESP32に、個人情報を盗み取る目的で悪用可能な隠し機能があると報告された。Bluetooth規格に関する研究を進める中で発見され、スペイン・マドリードで開催されたセキュリティカンファレンス「RootedCON」で公表された。問題の隠し機能を悪用した場合、敵対的攻撃者はなりすまし攻撃で端末を永続的に感染させることが可能であることがわかった。セキュリティ研究者のゼノ・コヴァ氏は「(問題視されている)コントローラーメモリを読み書きするベンダー固有のHCIコマンドは、BroadcomやCypress、Cypressなど他メーカーのBluetoothチップにもみられる一般的な設計」であると反論し、Tarlogicは表現を「バックドア」から「隠し機能」に改めた[25][26]。

Espressifは2025年3月10日、Tarlogicの調査結果を受けて声明を発表し、文書化されていないコマンドは内部テストに使用されるデバッグコマンドであると述べた。「発見された機能は、テスト目的で含まれているデバッグコマンドです」と 声明には書かれ、リスクは低いものの、今後のソフトウェアアップデートでデバッグコマンドを削除すると表明した[27]。

関連項目

参考文献

  1. ↑ “RISC-V Days Tokyo 2023 Summer 出展社情報 / Exhibitor Information | RISC-V 協会 | RISC-V Association” (2023年4月28日). 2026年5月3日閲覧。
  2. 1 2 3 4 “2023 Annual Report”. Espressif. 2025年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月7日閲覧。
  3. 1 2 “エスプレッシフ社 Espressif – エム・シー・エム・ジャパン株式会社” (2025年10月22日). 2026年5月1日閲覧。
  4. 1 2 3 4 “テック界でシンガポールから新たなビリオネアが誕生、Espressif Systems(楽鑫) のTeo Swee Ann(張瑞安)氏とは何者か?”. BRIDGE. 2026年5月1日閲覧。
  5. ↑ Tay, Peck Gek (2023年7月25日). “Singapore's '007' who took the world by storm with his chips”. Business Times. 2023年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月7日閲覧。
  6. 1 2 岳人, 越智 (2025年10月31日). “3ドルで世界を変えたIoTマイコン「ESP32」、技術の民主化に彩られたEspressif Systemsの歴史 - FabScene(ファブシーン)”. fabscene.com. 2026年5月1日閲覧。
  7. ↑ By (2014年9月6日). “The Current State Of ESP8266 Development” (英語). Hackaday. 2026年5月22日閲覧。
  8. ↑ 岳人, 越智 (2025年10月31日). “3ドルで世界を変えたIoTマイコン「ESP32」、技術の民主化に彩られたEspressif Systemsの歴史 - FabScene(ファブシーン)”. fabscene.com. 2026年5月22日閲覧。
  9. ↑ 立国, 彭 (2025年7月31日). “乐鑫科技定增提交注册 拟募集资金17.78亿元” (中国語). 中经互联-上市公司网. 2026年5月3日閲覧。
  10. ↑ Platonov, Ivan (2019年7月17日). “The 'Star' Goes Wireless: Espressif Systems Prices IPO at CNY 62.60 per Share”. EqualOcean. 2020年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月7日閲覧。
  11. ↑ “Espressif Systems (Shanghai) Co., Ltd. 688018”. Shanghai Stock Exchange. 2026年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年1月9日閲覧。
  12. ↑ Flaherty, Nick (2022年5月2日). “Espressif moves exclusively to RISC-V” (英語). eeNews Europe. 2026年5月1日閲覧。
  13. ↑ 腾讯网 (2024年8月2日). “全球第五,乐鑫科技凭什么?_腾讯新闻” (中国語). news.qq.com. 2026年5月1日閲覧。
  14. 1 2 “Espressif Acquires Majority Stake in M5Stack, Enhancing AIoT Ecosystem” (英語). Espressif Systems (2024年4月22日). 2026年5月3日閲覧。
  15. ↑ TAKASUMasakazu (2024年5月2日). “EspressifからM5Stack株式取得リリース・M5Stack日本ツアーのニュース(日本語訳)”. スイッチサイエンス. 2026年5月1日閲覧。
  16. ↑ “百科参考资料”. baike.baidu.com. 2026年5月3日閲覧。
  17. ↑ “RISC-Vプロセッサ内蔵でWi-Fi 6とBluetooth 5による無線通信も可能なSoC「ESP32-C5」が登場、すでに開発ボードが2000円台で入手可能 - GIGAZINE”. gigazine.net (2025年5月1日). 2026年5月22日閲覧。
  18. 1 2 FabScene編集部 (2026年1月27日). “Espressifが初のWi-Fi 6E対応ESP32-E22発表、トライバンド対応で最大2.4Gbps - FabScene(ファブシーン)”. fabscene.com. 2026年5月1日閲覧。
  19. ↑ “百度安全验证”. wappass.baidu.com. 2026年5月3日閲覧。
  20. ↑ “「日本のユーザーにはとても感謝している」 M5Stack TechnologyのジミーCEOが語る今と今後、そして「MSX0」との向き合い方”. ITmedia PC USER. 2026年5月3日閲覧。
  21. 1 2 腾讯网 (2024年8月2日). “全球第五,乐鑫科技凭什么?_腾讯新闻” (中国語). news.qq.com. 2026年5月1日閲覧。
  22. 1 2 Gek, Tay Peck (2023年7月25日). “Singapore’s ‘007’ who took the world by storm with his chips” (英語). The Business Times. 2026年5月1日閲覧。
  23. ↑ “ESP モジュール”. Espressif Systems. 2026年5月1日閲覧。
  24. ↑ “ESP チップ”. Espressif Systems. 2026年5月1日閲覧。
  25. ↑ “何百万台ものIoT端末に使用されているESP32チップに個人情報窃盗につながる可能性のある隠し機能が存在 - GIGAZINE”. gigazine.net (2025年3月10日). 2026年5月1日閲覧。
  26. ↑ Toulas, Bill. “Undocumented commands found in Bluetooth chip used by a billion devices” (英語). BleepingComputer. 2026年5月1日閲覧。
  27. ↑ “Espressif’s Response to Claimed Backdoor and Undocumented Commands in ESP32 Bluetooth Stack” (英語). Espressif Systems (2025年3月10日). 2026年5月1日閲覧。